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カスタマーレビュー数:2

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薄いながらも中身は濃い
 苅谷氏の本は初見であったが、確かな政治学者である山口氏が共著するだけある教育学者だった。  前半の苅谷氏の公演を読み、格差を「不平等」と言い換えるセンスのみならず、国家予算と事務教育費、双方の伸び率が比例しない点、PISAの数学力変化グラフで、学力の低い子が更に低下した点、やがて来る教員不足などの指摘などを読み、実際にそれを聞きたくなった。  対談部分でも、フィンランドモデルを紹介する本を時折目にするが、北欧型でも能力が高くても職に就けないとの問題点を、指摘しているのを目にしたのは初めてだし、「良い事てんこ盛り」な教育政策の矛盾についても考えさせられた。  教育は、経済政策などと異なり、短期軸で考えるのではなく、長期的視野でよりよい方向へと教育を変えていきながら、、問題点をそのつど改善していかねばならぬものなのだ。
学力低下は学力二極化!たった3年で「できない子」の学力がますます低下
学力低下に関して、 「順位低下は参加国が増えたから」とか 「錯覚」だといった誤った認識が広まっている昨今、 本書p.20で取り上げられている 「PISAの数学学力の変化」を見てみると、 2000年から2003年のたった3年間で、 できない子(下位25%)の学力が40%も落ちていることがわかる。 つまり、学力低下=学力下位層の大幅な学力低下=学力二極化なのだ。 「ゆとり教育ができない子をますます低下させている」 という指摘は、そういう意味で正しかったことを示しているだろう。 本書ではこうした学力問題が中心となる論題ではないが、 特に学力下位層へのケアを含めた「教育の平等」について、 国や都道府県レベルでの教育予算の少なさを指摘している点や これまでの教育改革の「ポジティブリスト」的な発想の転換を促す点など、 今後の格差社会と教育改革の問題について目指すべき方向性を示す一冊であろう。



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¥ 1,050(税込)
通常3~4日以内に発送
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カスタマーレビュー数:9

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律された密息時空間を体験
2008年10月28日、紀尾井ホール(大)で行われたこの本の著者である中村明一氏の「虚無僧尺八の世界 京都の尺八I 虚空 第15回リサイタル」で想像を絶する体験、体感をいたしました。演奏するときだけでなく、所作のすみずみまで静かで律され、さらにこの大ホール全体の不思議ともいえるほどの澄み切った水面のような時空間。これは、中村明一氏がこの本で「密息」を紹介し、また東京新宿の朝日カルチャーセンターや大学やさまざまな場所でこの2年間「密息の講義」をしてきたことの賜物ではないかと思います。 会場のあちらこちらに、中村明一氏の「密息」の読者や受講生がいらして、「密息の連鎖派動」が会場のすみずみまで拡がって、律された透明な時空間になっていたのを感じました。 『中村明一氏の演奏を聞くほうも密息で』 という稀有な現象が実現した時空間は、圧巻でした。まったく息をする音が会場全体にないのです。静かな深い緊張感は心温まるものでした。
古来武道、芸道で本格とされた呼吸法
ある流派で古武術の稽古をしていますが、やはり、呼吸(発声)、姿勢、歩行が基本となっていて基本稽古にも丹田息をするための形が組まれています。姿勢に関しても本書と一致しています。真剣勝負では、現代の胸式呼吸、腹式呼吸だと呼吸の動きが体に表れてしまい、相手に読まれてしまいます。 普段も日本人古来の伝統的な身体操作(古武術)と、現代剣道との違いが多く悩むことが多いです。現代剣道はスポーツ化したため、日本の伝統からかけ離れてしまった面があると感じています。 こうして尺八という違う角度から考えるとよく分かることもあり、とても参考になりました。実践書としても理論書としても違和感を感じません。一読の価値があると思います。
教則本ではないですよ
個人的に中村氏のファンであり自身も尺八を演奏するので読んでみました。 面白いのは筆者の体験談で、特に密息との出会いの場面は映画か小説のよう。読みものとしては非常に面白いです。 ただ、具体的に密息を体得したいなら中村氏に直接指導してもらう必要があると感じました。やってはみるのですが、密息が出来ているのか分からないです。 独学の怖い所なのですが、本だけ読んで密息が可能になったと喜んで他人に強制することだけはしないように心掛けたいです。
本来の日本人に気づきます。
 四季に恵まれ、天地の恵みを頂けるこの地に生きている ことを改めて知らされます。  その土地柄から必然的に身に付いていた身体のこなしや 筋肉の使い方から、独自の呼吸法が生まれました。  この呼吸法を現代の私たちは置き去りにしています。  お腹を意識した生活形態がポイントです。  心身の安定にも役立ちますよ。  
深くて目からウロコ!しかもすぐ役立つ!
NHK-BS2週刊ブックレビューでフルーティストの山形由美さんが「夢のような呼吸法」と紹介しておられたのを見て、即買い、一気に読みました! う〜む、深い…)-_-( 毎日してる呼吸、無意識にしてる呼吸から、日本文化が見えてくるなんて、目からウロコ! 写真とイラストでわかりやすく説明されているので、さっそく試しながら筆ペンを持ってみたら、筆遣いがキレイにいってびっくりです(^_^)v



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多様な現代米国思想をジャーナリストの眼で描いた好著
試みにリベラルという言葉を広辞苑で引いてみると自由主義的あるいは自由主義者となっている。従来の日本語の感覚からいうと自由を重んじて政治的には統制経済に反対の立場に立つ人物がリベラリストとなるが、どうも違うらしい。 米国政治は共和党と民主党の2大政党制といわれる。共和党は保守政党であってネオコンとはそれが先鋭化したものとして日本でも揶揄される傾向があるが、そう簡単なものではないらしい。また民主党はリベラルといわれるが、ハイエク流の自由主義を指向しているわけではなく、著者は誤解を避けるためリベラル(進歩派)としている。これらのことは米国政治や思想に詳しい人にとっては自明のことなのかもしれないが、素人にとっては理解のために有難い。著者はジャーナリストであり直接、思想家に会って取材をする強みがあり説得力を増している。 米国ではエドマンド・バークの保守思想を継承する思想家が戦後のラッセル・カークまで現われなかったのは意外であった。ネオコンの出自についても興味深い事実が語られる。そして米国ではどのような態度を取るにせよ、宗教(キリスト教)と思想は切り離すことができないことが実感される。 確かに現代の米国の(政治)思想は多様であり、また同じ思想家においても変化して止まない。そしてサブプライム問題を契機とする世界的な金融崩壊の脅威の中から今後、米国でどのような思想が生まれてくるのであろうか? 著者には是非、フォローしてもらいたいものである。
ジャーナリストが描く思想
ジャーナリストが思想を描くとこうなるのか。まれに見る本だ。漱石の「こころ」の英訳が生まれる背景にあった思想史のドラマを描くエピローグは白眉だ。ハイエクと江藤淳が、不思議な縁でつながっていく。そのドラマを読むと、思想のグローバルな動きに粛然とさせられる。



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こんな本が出てよいのかと、思わず唸ってしまう
大胆かつ直截な題名に惹かれて、頁を繰ると性器図や枕絵のオンパレード。立ち読みもままならず、手っ取り早く購入。中身は江戸文化に精通した元都立深川校長の執筆で、予想に反し、文章にいやらしさが無く、素直に読み切れる。「柳多留」など古川柳の引用や淡々とした筆の中にユーモアもあり、情景を思い浮かべ思わず含み笑いする。体位を想像して無意識の内に、身をひねったりしてしまうので、通勤途上の読書は止めた方が良い。周囲から不審の目で見られること間違いなし。
真面目に書かれた本だということはわかっていてもニヤニヤしてしまうのは、自分が俗物だからか…
「おさめかまいじょう」は遊女屋の主人が書き記した、遊女に対する性技指南書である。今でいう接客マニュアルにあたるのだろう。あくまでマニュアルなので文章自体は淡々としているのだが、細部に渡って記されたそのテクニックには唸ってしまう。門外不出の書だったそうだが、「どうやって男だけをいかせるのか」という内容を考えればそれも頷ける。 本書はこの「おさめかまいじょう」を真面目に解説したものが大部分を占めるのだが、これが非常に面白い。真面目に書かれた本なので襟を正して読まなければならないのかもしれないが、リアルすぎて笑ってしまう。 そして、興味が先走ってページを捲る指が止まらずあっという間に読み終えたのだが、文章を読んでニヤニヤ、春画を眺めてニヤニヤしている姿は決して他人には見せられないものだったに違いない。 現代の性風俗もあと100年も経った時には、「平成文化」として研究されることになるのだろうか。その日が来ることを楽しみに、長生きしなければなるまい。
めちゃくちゃ面白いのだが、読む場所に困る。
まず冒頭の遊女性技指南書「おさめかまいじょう」の詳細解説に度肝を抜かれる。遊女としてよい性器、悪い性器、イラストつきでドドーン。男のタイプ別イカせ方。 体位研究など実に真摯に快楽をもとめた江戸の性風俗を緻密に追う・・・豊富な春画付きで。むさぼるように読んでしまったが、実際のところ読む場所に困った。 自宅で腰を落ち着けて読むものじゃなし、さりとて電車の中で読むには全ページ満載の春画が気になる。 結局、カバーをかけ、電車の中で横のひとに見えないよう注意深く開けて読んだ次第。



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カスタマーレビュー数:3

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医療従事者を労働者とみる事が、医師・病院・患者のメリットにつながる
 医師不足による医師の過労死が、最近やっと顕在化してきた。   医局支配システムの中で隠されてきたものが、ようやく自由に医師が、診療科・病院を選べるようになり、表面に出て来た訳だが、これにより宿直の後、日勤を続けるなど35H連続勤務のようなハードな勤務が、月に何度もあり、酩酊状態に近い体調で診療を続けている実態も明らかになってきた。  その上、無過失保障制度が取り入れられていないので、民事・刑事裁判で鑑定の難しさによる不平等な判決を出され、責任を問われることもあり、医療過誤に関する保険や訴訟費用もバカにならず、いずれそれらは、資料報酬に上乗せせざるを得ない状況にもある。  本書では触れられていないが、それ以前に、既に訴訟予防の“防衛医療”を行っている医師も多かろう。  帝王切開率が増えているのもそれ故だし、“よきサマリア人法”が明文化されていない以上、乗り物内での緊急患者発生時、その場に居合わせた医師が、医師と名乗り出、応急処置をしてくれるかどうかも疑わしいのが現状だ。  患者側もコンビニ医療を慎み、病院側も大阪・厚生年金病院のような余裕ある医師確保に努め、厚労省は、今の現場にツケを回すシステムを早く変えなければ、日本の医療は益々荒んでいかざるをえない。
医療の実態
医師不足は切実な、また身近な問題として危機感を覚えている。 娘が通う病院でも、重い症例の多い科の医師の人数が目に見えて減ってきている。 もっと費用負担しますから、「お願いですからやめないでください先生」と言う気持ちになる。 特にニュース等の最近話題にのぼる産婦人科医の不足。 実は、分娩あたりの産婦人科医の人数は減っていないのだという。 それでは何が問題化というと、出産の高齢化に伴う分娩のハイリスク化。 40歳を超える出産も珍しくない現在、一例ごとの分娩が以前にも増して医師のエネルギーを奪うことになっている。 それに加えて、医局制度の弱体化。 大学病院を頂点とする、関連病院への医師派遣機能が低下してしまったが故の医師不足も背景にはある。 医師の当直明けの外来診察などがあることは知っていたが、当直が無給で行われていることは初めて知った。 当直からくる肉体疲労に加えて、無給であるため他の病院でのアルバイトが必要になる。 この制度の改正のために研修制度を取り入れたものの、現在のところうまく機能しているとは言いがたい。 ここはひとつ、制度変更を行った厚生労働省に考えてもらうのは当然として、我々国民も世界に誇る「国民皆保険制度」の維持のために、医療費の抑制と適切な医療費の上昇には理解を示さなければならないのだと思う。
読みやすく、為になる。
シンポジウム「なくそう!医師の過労死」(2007年11月14日)を元にまとめられたもの。 「ノーフォールト」の岡井崇先生、小児科医、弁護士2名、ジャーナリスト1名の共著。 医療崩壊を、医師の過労という角度から検証して行く。 ほぼ全ての勤務医は労働基準法違反であるが、今一斉に禁止してしまえば医療現場は崩壊してしまう。医師の過酷な勤務状況から、医療問題を考える入門書的好著。



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批判的知性の試金石
「こんど、家来の角右衛門が日本へ帰るので、テルマとカクセイをお土産に届けさせた。無事に着いただろうか。そのうちコカクセイ一人は娘にやってほ しい。私も戦場で十一歳の子どもを手に入れ(求め)て召し使っているが、ひどい病気もちで困っている。いずれ娘にもテルマを一人、手に入れ(求め)て贈ろう。また拾左衛門尉殿にも下女にでもできそうな子を一人、手に入れ(取り)て、次のお土産にしよう。ただ、いまは加徳カドクという島の暮らしで、食べるのがやっとだから、そのうち手の者をやって、手に入れたら(取り候わば)送りたい・・・。」本書、pp.62-63  これは、外国出張しているお父さんから家を守るお母さんへの手紙の一節である。時は今から400年前、慶長二年(1597)。差出人は、島津家家来で小身の武士、大嶋忠泰。受取人は、国元の妻(内方・宿本)。差出地は、再侵略真っただ中の朝鮮半島の戦場。  この藤木の書は衝撃的な本である。旧版は1995年に出ており、その後新たに確認できた史料を付け加えた新版がこれだ。上記は、朝鮮半島における秀吉軍の奴隷狩り戦争に関するものだが、驚くべきは、これが、日本国内の戦場における普遍的な習俗の国外持ち出しであること。  つまり、私にもあなたにもどこかの歴史的段階で、戦場の戦利品としての奴隷の血が流れている可能性もあるわけだ。美醜善悪を含め、己の歴史的来歴を知るために必ず読むべきである。この事実を冷静に受け止めることができるかどうかが、その者の批判的知性の有無をあぶり出すであろう試金石の書。
瞠目の一書
村に対する人や物の略奪(乱妨)が日常化していた戦国時代の戦場。そして略奪こそを目当てに戦いに加わった下級兵士たち。現在では既に通説化しているかもしれない戦国時代の現実であるが、門外漢の目には非常に新鮮であった。時代劇で描かれる華やかな武将たちと同時に存在した、戦争の現実がここにある。 更に驚かされたのが、東南アジアに売買された日本人奴隷(戦争での略奪被害者)と、同じく東南アジアで繰り広げられた西欧諸国の植民地戦争に投入されたという日本人傭兵の存在。きちんとした研究があるからこそ明らかになるこうした現実に、歴史の幅広さと奥深さを痛感させられる。 新版ということで、旧版の訂正や新たなエピソード挿入等があるそう。価格も手ごろなので戦国史の好きな方には是非薦めたい。




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今の学生達が置かれている現状
社会がおおよそ完成し若者が思い切り社会に貢献できるスキマの少ない 今の日本。その狭いスキマの中でいかに生きていけば良いのか、この先 大人になったらどんな努力をすれば報われるのか?を模索しているのが 今の学生達だと思う。努力したくない訳ではない。努力したのに報われ なかった親を見、何とか早期に自分らしさを発見して安心したいという 焦りが大いにあると思う。その焦りの中に若さというパワーが注入され て昨今の事件へと発展してしまっているのではないかと感じた。大人か らは奇異に見えるパフォーマンスでも何か表現しておかないと不安でし ょうがない。そういう切実な心境を垣間見ました。
「個性」ってなんだろう
「個性」を見つけ出すことを煽られて「成長」の観念がわからない子どもたち。 最近子どもたちの犯罪。 色々原因は論じられているけど、果たしてどうなのだろうか? 近頃の子どもは本当に問題をかかえているのだろうか? 社会が子どもたちに何を期待してしまったのかを考えさせられる本。 文章が難解でないので読みやすい。 p 「オンリーワン」が大事だと言われてるけど、 自分には個性なんてものがない気がする。 そう思って悩んでいる人に読んでもらいたい。



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主観を抑えた説得力あるデータ提示、教育関係者は必読
1989年と2001年に行われた学力試験のデータを比較検討し、ゆとりを求める学習指導要領の変化によって、小中学生の学力にどのような変化が起こったか、また同じ時期の学童においても、学校の指導方針や通塾の有無といった背景因子の差による学力の差についても検討をおこない紹介した書。約70ページであり、数時間あれば誰でも読破可能。 『教育』をテーマにした書は無数に存在し、多くの著者が持論を展開しているが、主観に基づいた夢とそれを正当化する論理を後付けしているだけの書が氾濫していると思う。それらにおいてはデータの一部分だけをもちだして根拠としているものも多く、そういった所謂識者には政府の諮問委員会に属している者も存在する。結果的に、現在においてもゆとり教育の失敗を認めない者さえいる。これに対して本書では、多くの調査結果に基づいて、可能な範囲で客観的解釈を行い、それらを簡潔に述べている点で評価されるべき内容と思う。大まかな要旨としては、基礎学力は低下していること、家庭環境や通塾などの背景因子によって学力が階層化されていること、ただしこれについては学校の対応によって改善が可能であることなどが挙げられている。本書の主張で目を惹くのは、『学力の結果は本人の自己責任というのであれば、責任を担えるだけの教育は担保すべき』という点である。 本書の問題点としては、調査を行った時期における学習要領などの背景因子をもう少し比較検討しやすいように紹介し、因果関係を踏み込んで検証してもいいと思ったこと、複数のデータをもとに解釈したい場合に表などの構成がやや見づらい点。 全体的には良書で、教育者や政策立案にかかわる者は全員が理解していなければならないと思う。マスコミでの討論を見ていても、本書のような基本的なデータを知らないと思われる政治家なども存在すること自体が問題で、レベルの低い政治家をみても根本的な初等教育がいかに重要かを再認識させられる。あくまで調査報告であることが明記されていて、主観的判断は省略したいという意図がよくわかるが、このような書こそさらに踏み込んで、もっと強い主張を提示してもよいと感じた。それらについては本書の著者が他の著作で述べられているが、本書自体は星4つの評価。
まずデータを示すことの重要性
 小中学生を調査対象とした学力・学習実態に関する調査報告書。大学の先生の書いた、わずか70ページの小冊子。  本書の目玉は2つ。2部構成の前半のテーマは「学力低下」。いわゆる「ゆとり教育」以前(1989年)と以後(2001年)で、子供たちの学力・学習状況はどのように変わったのか、その実態を正確に把握しようとする。単にテストの成績を比較するだけでなく、通塾者と非通塾者間の比較、家庭における学習状況の変化、等も視野に入れている。  著者らの行った比較調査の結果によると、テストの成績で示される「旧学力」はこの12年間で全体的に低下してだけでなく、「できない子」の層がより厚くなっている。学力の低下は非通塾者でより顕著で、学力低下が通塾の効果によって見えづらくなっていることが暴かれている。  後半のテーマは「社会階層の影響」。子供の学力・学習状況に関する社会階層間の格差の存在を指摘し、学校教育のあり方によってはその格差を縮小することもできる可能性を示す。  調査結果によると、テスト成績、学校での主体的な学習への取り組み、家庭での学習状況、等にも、子供の家庭の社会階層による明確な差が認められるという。学力低下を通塾によって補うこともできず取り残された子供たちは、学校の授業にもついていけなくなってしまう。「全ての子供が学ぶ意欲を等しく持っているはず」という前提にもとづいた子供中心主義の導入が社会階層による学力格差の拡大という結果となってあらわれた、欧米社会と同じ傾向に日本もあるようだ。  「学力低下」問題に関してはこれまで全く興味を感じたことがなく、このテの本を読んだのはこれが初めてだったが、1冊目としては良い本を引き当てたと思う。調査結果の解釈において疑問に思う点もないわけではなかったが、まずデータを示すことの重要性を改めて感じた。
競争社会へ変わる社会への準備課程としての公教育の問題
データのネタは,阪大『学力・生活総合実態調査』(01年,小学5年生2100余人と中学2年生2700余人)。政策変更の直前直後での変化を見るのに好都合という理由で選ばれたらしい(11頁)。 p 「実態」というほど統計データがあるわけではないが,「50円切手4まいと70円切手3まいをかいました。いくらはらえばいいですか。式を書いてときなさい」という算数の問題に,89年時点で81.2%が正答したのに,02年時点では62.7%しか正答できなかったということはわかる(21頁)。確かに,これでは御使いもできず,生活に支障が出るだろう。通塾の有無での格差は大きいが,それでも学力は落ちている。 p “通塾すれば問題なし”という視角ではなく,旧来型日本社会から変化しつつある社会(競争社会)への準備課程としての公教育の問題として捉えるべきと著者は力説している。
小学校は伝統的な学力、そして中学校は新しい学力観
 日本の小中学生の基礎学力低下の実態を、1989年と2001年に実施した学力テストと家庭環境についての調査により分析している。それによると、小中学校とも明らかに「基礎学力が低下している」。さらに、例えば小学校の算数では、少数の計算、分数の概念に関する学力の低下が大きいという分析がされており、問題点を具体化させており、とても興味深い。 p  これらの結果は、1989年の学習指導要領の改定「新しい学力観」は、教育における公立学校の大きな役割の一つである「学力の下支え」において、明らかに失敗したことを示している。 p  「新しい学力観」で提唱されている学力(能力)の重要性を否定するつもりは全く無いが、この学力を有効に活用するためには、当然「基礎学力」がベースになると思う。本書の調査でも、小学校での授業が、先生が板書したり、ドリルをやらせる「伝統的な授業」を経験している方が、中学校時の学力が高いという結果が得られている。 p  スポーツや音楽などで、基本動作が身に付くまで反復練習をやったり、身に付けた技を有効に活用するために、筋肉トレーニングなどを行う事は常識である。これは、学力においても同じ関係であると思う。計算ドリルや漢字ドリルなどはトレーニングである。このトレーニングが1989年の学習指導要領下では軽視されてきたように思う。 p  また、文科省などの「公」が存在を認めたがらない、家庭の文化的環境の「階層差」が子供の学力に影響を与えている現実を初めて明らかにしており、興味深い。カエルの子はカエル、という諺が指しているものは、家庭の文化的環境の階層差が学力に及ぼす影響のことかも知れない、と思った。
論点整理のために
今となっては一段落ついた感がある「学力低下」論。本書は、当時激しく論じられていた「日本の子供の学力はゆとり学習のせいで落ちている」という仮説を、実地にサンプルを採って学力試験を行い検証し、その結果を評価したものです。 p 当時の議論は、「東大京大」だの「一流私大」だの「中高生」だの、いくつかあるサンプルをかき混ぜて、とにかく学力低下しているのだからなんとかしなきゃ、ゆとり教育のせいだからやめちまえ、というような極めて短絡的でアジテーション的なものに思えましたが(いわゆる「仕掛人」の立場からすれば、世の興味を引くためには仕方ない手法なのかもしれませんが…)本書の立場はもう少し冷静で「じゃ、誰のどの学力が、どのような授業により上がってるの?下がってるの?」ということを検証しています。その冷静さは、あの華やかな議論から1年有余を経て、その価値を増していると思います。 p 本書の主著者は「教育における階層差」を一つのテーマに研究を進めている人です。そうした視点から本書が学力低下を検証するとき、ゆとり教育で欠けた部分を塾で補うという傾向が階層差を広げる可能性があることを明らかにしています。その中で公教育はどのような役割を果たすべきか、果たせるのか、実例を踏まえて論じる本書は、冊子は薄いけれど中身の濃い分析を行っている良書であると思います。無論、著者たちの視点が絶対だというつもりは全くないですが、少なくともなんでもかき混ぜて学力低下というナイーブな論から、より分析的に「ではどこにどのような問題があるのか」と進めていかないと、「では何をすべきか」という答えは出てこないと思います。 p 特に2年前に学力低下学力低下と大騒ぎして、今になったらもう忘れている憂国のオジサンたち(笑)にはとてもお勧めの本です。問題はたぶん、あなた方が思っているところとは別のところにあったのかもしれませんよ。



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教育改革は現場の専門性から
 7人の教育社会学者と1人の学校臨床学者が、2005年に実施した愛知県犬山市(石田芳弘市長)の教育改革のシステム評価を全国に発信するために、翌年に刊行した小著。犬山市では、市教委(瀬見井久教育長)主導で、現行制度の枠組みの中で、義務教育として果たすべき学校の役割を、市内全ての学校で、現場の教師の専門性を高めることを通じて、最大限地道に発揮する方向へと教育現場を支援し、方向付ける教育改革が、1997年以降行われた。それは行政の財政支援による市教委事務局の強化と、授業改善と学校運営の改善とを連動させた学校の自立(副教本づくり、少人数学級と学び合いの授業、二学期制等)を二本柱とする。著者達は、表紙裏にあるようなシステム評価プロジェクトによって、これらの改革の成果を数量データにより検討し、学び合い型授業が教育格差を縮小する上で一定の効果を持っていることを、明らかにする。また、改革の担い手意識(教師間の支え合いと関連)と改革対象意識という二つの因子を基に、教師を積極的関与層、改革逆説直面層、担い手意識希薄層に分け、それぞれの改革への評価をまとめている(総体として見ると比較的評価が高いが、改革の速さや負担への不満もある)。保護者も、少人数授業・TTは支持しつつ(この点で階層的な偏りは見られない=それぞれが異なる希望を読み込んでいる)、学習意欲の改善については厳しい見方をしている。更に著者達は、自らの評価法の在り方をも検討対象とし、調査項目とその並べ方の設定、個人の特定の是非、評価する者−される者という関係の逆転の可能性等について、ときに市教委との議論を繰り返しつつ、検討を加えている。それは著者達の提示する、ネットワーク型行政モデルに関連している。最後に、著者達はこの結果を昨今の教育改革の潮流の中に位置づけ、その課題をも探っている。

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