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¥ 998(税込)
通常3~4日以内に発送
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カスタマーレビュー数:1

くちコミ情報
これから須賀敦子を読む人は、まずこの文庫版全集から
須賀敦子の文章は癖になる。たまたま「本に読まれて」を手に取る機会があって、その文章の美しさに惚れ込んでしまった。その文業が、すでに文庫版全集になっているとは……。 デビュー作「ミラノ 霧の風景」と第二作「コルシア書店の仲間たち」が1冊になって、単行本未収録の「旅のあいまに」も入っていて、お買い得。 これから須賀敦子を買って読もうという人は、当然、この本から手にすべきです。




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カスタマーレビュー数:3

くちコミ情報
たまらないほど素晴らしい、今そう思わせる一番の作家
 短編集「停電の夜に (新潮文庫)」、そして長編「その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)」に続く、ジュンパ・ラヒリの最新作です。短編と連作中篇を集めた一冊で、今年(2007年)7月にフランク・オコナー賞を受賞したとのこと。  ジュンパ・ラヒリの作品は間違いない。そして継続して翻訳を担当してきた小川高義氏の筆遣いも間違いない。私のそうした期待と信頼を全く裏切らない仕上がり具合に、大いに満足しました。  ラヒリの作品ですからもちろん主人公の大半はベンガル系インド人のアメリカ移民二世となります。しかし、本書所収の最初の作品で表題作でもある「見知らぬ場所」は、その「ベンガル系インド人のアメリカ移民二世」の物語であることをことさら感じさせることなく読者をすっと物語世界へいざなっていきます。  妻を亡くした老父をひとり東海岸の街に残し、今は夫と子どもとともに西海岸の街に暮らす娘。核家族や世代間格差、高齢化社会、そして老親の再婚と、舞台が日本であってもさほど違和感のないテーマが散りばめられ、それを小川氏の巧みな翻訳の力によって日本語で読むことが可能になって、この作品は読者の前に普遍的な現代の物語として立ち現れてくるのです。  本書所収の物語たちが共通して持つのは、些細で平凡に見える人生に潜む小さな秘密です。  学校教育を経て社会に独り立ちした人間は、そこで初めて線路の敷かれていない人生を切り拓いていくことになります。教科書も参考書もない人生という海をどう泳いでいくか。  海原で人間が抱えるウソや隠し事は、時に浮き輪の役目を果たすこともあれば、重石となってしまうこともあります。  そんなウソや隠し事の割り切れない苦くも甘い味を、ラヒリの紡ぐ物語はたまらないほど見事に提示して見せてくれるのです。心がざわつかずにはいられません。  次回作が一日も早く読みたい。  ジュンパ・ラヒリは、今わたしに一番そう思わせる作家です。
翻訳版にがっかり
彼女の作品を毎回心待ちにし、最新作の本著も原書で読みました。発売後、すぐにハードカバーで読みました。 大半が過去のニューヨーカー誌に掲載されていたから「読み返し」が多かったけれど、やっぱり彼女の創り出す独特の空気、言葉の並び、息遣い、全てが期待通り。 本作最後に収録されている作品は、特に印象的なラスト! しかし前作とても良かった小川氏の翻訳にがっかり。前作はこれがそのまま日本語で書かれたのかと思う位、目にも心の耳にも馴染む翻訳だった。 しかし本著はどうだろう? 特にこの「がっかり」は物語の後半、つまりJhumpaが最もその作品に特別な息を吹きかけている(私は少なくともそう思います)部分で、ずっこけるというか、日本語がスムースに流れてゆかず、とても「つまづきながらラストシーンだ」という感じが否めません。 原書で読むのとは雲泥の差です。本当に彼女の作品が好きなら、絶対原書を読んでください。 私は翻訳版ではJhumpaの良さの半分も「感じられない」と思います。確かに翻訳だと、英語が読めなくても、「読めます」が、彼女の作品をしっかり感じることは出来ません。
待望の三作目
ジュンパ・ラヒリはやはり短編(訳者によると中篇)の名手です。 「停電の夜に」でこの作家に魅了され、次の「その名にちなんで」も読みましたが、この三作目を読み終えた今、やはり短編が素晴らしい!と思います。 彼女の作品の登場人物は大抵がベンガル人で、コルカタからアメリカに移住した家族。マサチューセッツに住む知的階級の人々。そのパターンは一作目から変わらないけれど、今回は異文化の中で葛藤する第一世代から、アメリカ育ちの第二世代の物語に移っている。強い絆で結ばれていた若い家族が、年を経てそれぞれの世界を持ち、あるいはこの世を去り、互いに存在が希薄になっていく。家族とは人生の通過点にあって永遠ではない。どの家族にもある日常から心のひだを描き出す。ジュンパ・ラヒリのさらに成熟した世界に浸り、読み終えるのが惜しいと思う。 後半の「ヘーマとカウシク」は連作となっている。 幼なじみの二人が再会する「一生に一度」。母を失ったカウシクの物語の「年の暮れ」。そしてローマでの偶然の再会からふたりが恋人となり別れる「陸地へ」。 偶然の出会いと言い結末と言い、下手をするとお手軽になりがちなところだが、その静かで知的な語り口で違和感はない。「年の暮れ」の中でカウシクの母を恋う心が切なくて泣けた。長い間待ったこの三作目。期待通りの出来に満足しています。 最後に、翻訳である事を忘れさせるような小川高義氏の訳も良かったと思う。




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通常3~4日以内に発送
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カスタマーレビュー数:8

くちコミ情報
素晴らしい短編
アリステスさんはかなりの寡作な方で31年で16篇の短編と1つの長編を出しているだけだそうです。 短編の舞台はほとんどどれも、カナダにある小さな島を舞台にしています。そしてそこに息づく自然と人間と動物、そして起源である先祖のハイランダー、スコットランドについてと、その言葉であるゲール語に重みを置いた小説です。「島」はアリステスさんの中でも完成度が高い短編だと思いますし、好きな話しです。北国の寒い環境と人間の業のようなものと歴史と起源などを織り交ぜた静かだけれど激しい(矛盾した表現なのですが、私にとってはまさに静かだけれど激しいとしか表現しようのない)素晴らしい小説でした。 何故か私にはガルシア=マルケスが思い出されるほどスケールが大きく(もちろん良い意味で)、それでいて小さなささやかなものにも温かみのあるまなざしを向けられているレイモンド・カーヴァーのような(もちろん良い意味です)愛着も感じられるのです。そして人間ではない生き物がどの短編にも重要な役割を与えられていて、動物好きな方にもオススメです。短編好きな方には是非。 好きな作品は表題作子供の頃の犬との思い出がよみがえる「冬の犬」、男と大きな灰色の犬をめぐる伝説「鳥が太陽を運んでくるように」、子供の頃に聞いた話しが不思議な重なりと光を当てられる「幻影」、燈台守としての一生を送ることの物語「島」です。 しかし中でも私個人が最も気になった、皮膚的にショックな作品は「完璧なる調和」です。無骨で不器用な男の孤独、それも手に入れた幸せを失ってからの孤独と、伝統と詩と歌声、それに関わる親戚とささやかな喜び。どの短編も非常に上手いですし、綺麗でスタイルもありますが、私にとってのこの「完全なる調和」は他のどの作品よりもずば抜けてよかったです。他の人がどう感じるかは分かりませんが、とてもショッキングな、忘れられない短編でした。 短編小説が好きな方、動物が出てくる物語が好き方に、オススメ致します。
息づかいが聞こえてきそう
8月の東京で冷房もない自分の部屋で読んでいたのですが、読んでいる間はうだる暑さを忘れました。本のタイトルになっている『冬の犬』なんて、まるっきり厳寒の中でのお話で、背筋が寒くなります。 p 短編集で犬をはじめ、羊、牛、馬といろいろな動物が出てくるのですが、まるでにおいをかげるほど近くにいるような感覚にとらわれるくらい、著者は彼らの生態を絶妙に描き出しています。 p 人の行動も含めて描写が生々しいのですが、読み終えると何かおとぎ話を読んだ後のようで、とても不思議な印象を持っています。
生き生きと、みずみずしい、けれど厳しい自然と現実
「赤毛のアンブーム」で観光客が増える前の、カナダ沿岸部。 生き生きとして、みずみずしい描写だけれど、 単なる、美しい自然への礼賛ではなくて、 そこに暮らす人々に試練を与える過酷な環境。 その厳しい寒さや孤独を舞台の上でリアルに描かれる、 人間と、動物たちの生と性。 大人も子供も、当たり前のように命と向かいあって生きている、 と紹介すると、文体やストーリーは無骨なイメージを 持たれるかもしれませんが、実に洗練された、趣味のよい世界です。
宝物のような作品集。
前作に続いて今回も良かった。ってこの作者の書くものを悪く言う人はいませんから、あらためて言うことでもないんですけどね。しかし、いい!マクラウドの描く世界は哀切に満ちて、叙情にあふれている。自然の厳しさ、家族の温かさ、時代の移り変わり、そして故郷を追われた流浪の民としての悲哀。ただ、そこで暮らしている人達を描いただけなのになぜこれほどドラマティックなんだろうと歯噛みしてしまいます。 朴訥で、頑固で、しかし情にあつく毎日を必死で生きている人達。我々が知ることのないもうひとつの世界。すぐそこにあるのに、あまりにも遠いその世界が厳しさを押しのけて、とてもうらやましく思えてきます。得がたい本ですね。ほんと宝物だ。
静かで激しい作品
とても静かなんですが、その静けさの中に激しい真実が垣間見えるっていうのかなぁ、なんかつくづくぼくは心配の少ない平穏な日常に埋没してるなぁと感じました。地球上には色んな場所があり、おんなじ家族を描くにしてもこれほどの隔たりがあるのかと。 p 生と死のイメージがあまりにも頻繁にあらわれ、だからこそ生命への力強いメッセージがびんびん伝わってきました。いつも灰色の雲に覆われて、ことあるごとに風雨にさらされている情景は、陰鬱で冷たい世界を象徴しています。でも、その中で毎日を真剣に生きている真っ当な人々のあまりにも厳しい生活が浮きぼりにされ、力強い生命力が強調されてるんですよね。  この作品で描かれる家族は、ほとんどが子の目を通して見る親や祖父母の姿なんですよね。そういったものは、世界共通だからとても身近で一種の郷愁にも似たせつなさを呼び起こします。普遍的だといわれる所以でしょう。余韻が残るのはそのせいでしょうね。 p  でも生活や風習はまったく違う。ぼくはこの本を読んでラテンアメリカに通じるマジックリアリズムの匂いも感じました。独自の文化が目新しく、そういった意味でもとても魅力的です。 p  あまりにも身近な自然の脅威。その中で身につけて代々伝えられてきた風習、独自の文化。こういった世界が今生活している我々とはあまりにもかけ離れているため、新鮮な驚きを感じます



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くちコミ情報
世界最高峰のフルコース
新潮クレストブックスが十年間に刊行した短編集のなかから、堀江敏幸が選んだ十篇が収められている。 もともと、短編に豊かな実りの多いクレストブックスの中から、短編の名手が十篇を選びぬくというのだから、面白くないはずがない。 デザート盛り合わせ、いやいや、塩味も辛味も、苦味もあるからデギュスタシオンのような、ぜいたくなひと皿。 アリステア・マクラウドも、ジュンパ・ラヒリも、アンソニー・ドーアも、イーユン・リーも、みんな一冊の中に収まっているなんて夢のようだ。 世界の名人たちの作品には、それぞれ長編なみの深みと味わいがあり、ひとつ読み終えるごとに深い満足を得られる。 堀江氏の解説「人はなにかを失わずになにかを得ることはできない」の最後の一行を読み終えたところで、これはデギュスタシオン、テイスティングなどではなく、世界最高峰のフルコースだったのだなあ、と気づく仕掛けになっている。 手もとにおいて、節目ごとに読み返したい一冊。



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¥ 1,995(税込)
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カスタマーレビュー数:12

くちコミ情報
海と結ばれた栄光の都市国家千年の興亡史。ここから日本が学べることは。。。
以前に「文芸春秋」に、”有力者のえらんだ日本のわかいひとたちにおすすめの歴史書”、みたいな特集があり、トップ3にはいっていたのです。それで初めてよんだのですが。。。 日本とおなじように海洋国で、貿易により繁栄を築いた栄光の国、ヴェネツィアの興亡史。強烈におもしろく、一気に読ませていただきました。 フン族の王アッテイラの攻撃から都の形成、貿易の成功による経済大国としての繁栄、途中でレパントの海戦やコンスタンティノープルの攻防を含む十字軍の戦いのサブストーリイも魅力的で、そして政治・外交能力の低下とともに影響力が下降してついにせめ滅ぼされるまでの壮大な歴史絵巻。 ヴェネツィアの成功の歴史は実に、戦後から近年までの日本と酷似しているのです。国家の原動力は強力な経済の活気であり、そしてともに海洋国家で大海という天然の国境に守られていましたが、ともに同じ運命を歩みかねないのではないか。。。少々心配になります。 日本人の先輩たちがこのくにの未来を背負うこれからのかたがたにぜひよんでほしい、と選んだのは同感で、よくわかります。名著であり、星5つ、絶対のおすすめ歴史モノです。
ローマ人の物語シリーズが終わることを心配な方へ・その3
これまでこのレビュー・タイトルで、「神聖ローマ帝国」と「ビザンツ帝国」の本について書きましたが、ローマ人の物語シリーズが大団円を迎えた後、お薦めする作品の大本命は同じ作者による本作ということになるでしょう。残念ながら文庫本は品切れのようですが、私が持っている文庫本版で上下巻併せて千頁を超す大作。ゲルマン民族に追われ、撃退して独立を保ってから、ナポレオンに滅ぼされるまでの、ヴェネツィア共和国(いかに徹底して君主制を排除したかも丁寧に書かれています。)の悠久の千年の歴史は、必ずや読者を惹きつけてやまないでしょう。ヴェネツィアを中心に、ライヴァル国(例えば同じイタリアならジェノヴァ等の他の海洋国家、イタリア外ではビザンツ帝国やオスマン・トルコ)との抗争、他のイタリア都市国家や法王との集合離散など、イタリア千年の歴史を俯瞰するのに格好の本です。作者には「レパントの海戦」等、本書に取り上げられた1エピソードに焦点を合わせた一連の好著がありますが、まずは本書でマクロ的にヴェネツィアを中心とするイタリアの通史を抑えてから、個々のエピソードの本を読むとよいのではないでしょうか。聖地巡礼パック旅行やヴェネツィアの女たちといった章もあり、本書は当時の人々の生活に目を配ることも忘れていません。これだけ充実した内容でこの分量、一度読み始めるとまさに巻を置くこと能わず、読書の醍醐味を味わうことができるでしょう。
男勝りの筆致
塩野氏はイタリア史を描かすと右に出る者がいないほど優れていると思う。限られた文献から逞しい想像力を駆使して次々に歴史上のヒーローに命を吹き込んでいく。本書、ベネチア史についても例外ではないだろう。ただあえて心残りだったのは本書での女性の描き方だ。イスラムで奴隷として捕らわれハレムの女王になりあがり頭脳戦で宰相を陥れたチェチェリア・バッホについては肯定的だった。けれどトスカーナ大公メディチの妻は大公に愛され大公を意のままにできる立場にいながらまったくせずおしゃれに終始と作者は否定的。また1000年にわたるベネチア史上政治にかかわりあいを持った女性は二人しかいないと不満気に漏らす。塩野氏は男勝りの論理的筆致だ。でもひょっとすると歴史の中心人物の社会的成功は上手く描けても繊細な内面にはせまることのできないのではないかという気がした。そんなことを考えたりしながら読むと面白かった。
大国中国と対峙する日本の生き方に多大のヒントが!
 6月末大学のクラスメートでアドリア海・エーゲ海のクルーズに行くことになった。そのクルーズの出港・帰港地が共にベネチアであり、クルーズ終了後更に2日間ベネチア観光の日程をとっていることから、思い立って昔読んだ塩野七生女史の「海の都の物語―ヴェネチア共和国の一千年」を読み直そうと考えた。 p  十数年前に読んだ記憶があるが、細部は殆ど忘れていて、今回のクルーズの航路がヴェネチアが地中海の女王として、活躍した通商ルートと重なり合う為、興味は尽きなかった。是非ご一読をお勧める。    歴史としても面白いし、1000年に亘って繁栄を続けた統治機構を作り上げたプロセスなど、政治機構論的にもかつての政治学徒としても勉強になった。「ヴェネチア共和国は資源に恵まれなかった国である。資源に恵まれた陸地型の国家ならば、非効率の統治が続いても、それに耐えていかれる。古代ローマ帝国、ビザンチン帝国、トルコ帝国も、悪政が続いてもそれが帝国崩壊につながるには、長い長い歳月を要した。一方、資源に恵まれないヴェネチアのような国家には、失政は許されない。それはただちに、彼らの存亡につながってくるからである」との指摘は日本と中国との関係にもそのまま通用しそうな議論で、身に詰まされる思いを懐いた。
地中海で隆盛を誇った貿易国家を描いた、警句と示唆に富んだ作品
いまではゴンドラと運河、という観光都市の印象が強いヴェネチアの都市国家としての千有余年に渡る歴史を描いた。 地中海で隆盛を誇った貿易国家の興亡の歴史を、「美術史以外、ヴェネチア史ついて書かれた書物が皆無」の日本に紹介した逸品。大部の作品だが、決して難解ではなく、著者独特の硬質の筆致に慣れると大変おもしろく読める。 p 後年の「ローマ人の物語」でも顕著だが、著者はこの国家の歴史を描くにあたって、単に歴史上の事象を追うのではなく、その背景となる文化、技術、考え方など周辺事象を含め、余さず描いていく。干潟の上につくられた都市の構造から説き起こし、船の構造や発展、銀行や為替といった商業制度とその発展、政治制度、服飾、女性史などなど。もちろん歴史としても、第四回十字軍、ラテン帝国、ジェノヴァとの制海権争い、オスマントルコ・・・と内容には事欠かない。 ヴェネチアが、キリスト教文化圏にあって、十字軍の狂信からも、宗教改革とその反動の独断からも、魔女狩り、異端裁判といった気狂い沙汰からも自由でいられたのはなぜか? p 君主制を選ばず、かといって宗教国家でもなく、それでいて強力で統治能力に優れた政体を維持できたのはなぜか? 「すべての国家は、必ず一度は全盛期を迎える。しかし全盛期を何度も持つ国家は珍しい。・・・それを何度も繰り返すのは、意識的な努力の結果だからである。」 などなど、全巻にわたって示唆に富む。



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この授業を受けてみたかった
 大学での講義からの抜粋という形だが、聴講した学生が羨ましくなる内容だ。もともとが話し言葉であるだけに、ひとり突っ込みや、話の脱線、学生とのコール・アンド・レスポンスなどライブ感に溢れているのも楽しい。  この面白さは、@興味の対象と講義の内容が合致している、A座学だけではなく演習が混じっている、Bフィードバックがある、C現役の作家に対する興味、で構成されていると思う。  @は大学の授業だと当たり前のようだが、実際には基礎や一般教養などで必須科目だから受講する場合も多いと思う。Aは耳学問だけの頭でっかちを防ぐ意味でも重要だ、Bは参加意識や、個人的なモチベーションの向上に不可欠、Cは世俗的な興味で、このスパイスにより単調になりがちな講義にアクセントが加わると思う。  このように講義の好例としての意義も深いのだが、一番の収穫は読解や創作の解答に幅を認めているところではないかと思う。これは受験時代とは大きく異なるところだ。  最後の第17章はそれまでとやや趣が異なる。しかし「分かるということ」とその悲劇、そして「読むことが書くことと表裏一体の表現である」という結びは感銘すら覚える結びである。
読書の自由を知る一冊
 2005年と06年に早稲田大学で北村薫が受け持った「表現の授業」の一部を活字化したものです。  新潮社や講談社の編集者や、歌人・天野慶を招くなど、北村薫ならではの創意工夫を凝らした授業が記されています。  編集者の業界裏話は本好きの読者にはたまらない面白さを伴っていますし、朗読家である北原久仁香を招いた講義部分の脚注に北村薫の短編集「1950年のバックトス」所収の「林檎の香」の裏話が書かれているのを見つけるのは、北村ファンにはこれまたたまらない読書体験といえます。  そしてなによりも、心が添うのは次の二つの言葉です。  ひとつは89頁で綴られている、  「様々な解釈は作品の中に隠れてい」て、「だからこそ、読むということが、ひとつの創作になるわけ」であり、  もうひとつは、ずっとくだって314頁の、  「読むというのは、自分がどういうところに立っているか----自分の位置を示す行為に外な」らない、です。  小中そして高校と、おそらく私たちのほとんどは読書とはあるひとつの考えを読み解く作業であると考えるように馴致(じゅんち)されるのではないでしょうか。しかし、読み解いた末に見えてくるものは読み手の数だけあるということを胸を張って言えるときに、はじめて読書は無上の喜びとなることを私自身も知りました。学校を離れた途端に読書が楽しくなった覚えのある身には、上に引用した二つはとても親近感のわく言葉に感じられるはずです。
テキストの書き方・読み方
本書は人気作家北村薫の早稲田での文章講義が纏められた一冊。 文章を書くという視点だけではなく、読むという視点からも講義を説く。 文章表現というとついテクニック論になりがちである。 しかし本書では文章に対する感性が重要だということを説いている。 書き手としても一流ならば読み手としても一流である著者の テキストへの感性の素晴らしさが読み取れて、 改めて文章の面白さ。それを追求したくなる。
大変良い講義でした…
みなさんは「守・破・離(しゅはり)」という心得を知っているでしょうか? 武道を志した人なら耳にした事があるでしょう… いや武道に限らず、茶道、華道など「道」とつくものすべてにおいて言える心得 簡単に言ってしまえば ・守(修)→師について型どうりにすべてを学ぶこと ・破→その型(流派など)を自らの修行で破りさらに心と体を発展させること ・離→守や離を意識せず独自の新境地を生み出すこと 何故こんな事を思い出したかと言うと この本の中で北村さんと、ある雑誌の編集者の話(講義)の中に 「真・善・美」という言葉が出てきたからなのです この本はわたしも大好きなミステリ作家である北村薫さんが 実際に早稲田大学文学部で講義をされた内容の一部を 活字化したものであって小説ではないのです 書きたい事を見つけ、想像して創造する… そんな講義から始まり 歌人を招き、生徒達に質問させそれを各自でコラムにしたり 実際に編集をされているプロの方から話を聞いたり 小説にとどまらず、多くの創作表現方法を語られています 講義の中に出てくる人物も本当に多種多様… ハムレットもあれば万葉集もあり サトエリ(佐藤江梨子)もあれば写真家のウメカヨさんもあり NANAもあってヒカルの碁もある わたしはそんな北村薫さんに 「守・破・離」を感じたのです この方は本当に「離」を極めた方だと… そして「真・善・美」… これは文芸作品とエンターテインメント小説の境界のあいまいな部分で 編集者の方が、この3つをすべて否定してしまったら エンターテインメント小説として成り立たないという話の流れで出た言葉 … わたしはひどく共感してしまいました もともと講義を収録した本 本当は「勉強になりました」と言うべきなのでしょうが わたしはとても面白く読み終わりました レビューなど書くのはおこがましいのです 北村先生… わたしは小説を書くには まだまだ修行が足りないようです 起立! 礼! ありがとうございました! 



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くちコミ情報
塩野女史のベネツィアへの愛情がこの本の魅力です
私の敬愛する竹田青嗣氏によれば、世の中の価値観は「真・善・美」に集約されるという。 この考えが正しいのであれば、歴史の場合、「善・悪」の価値観で評価するのではなく「真・偽」の価値観で認識すべき「事象」のように思う。 「情」と「理」の対立軸でいうならば、「情」で評価するのではなく、「理」で評価すべきなのではということ。 塩野女史の著書を通読していると、彼女の歴史観というのは、、常に「善・悪」や「情」でなく、「真・偽」及び「理」の視点で認識しようとする姿勢があり、非常に気に入っている。 しかしながら、塩野女史は、「善・悪」で評価はしないものの、「好き・嫌い」で評価しているところは読み手も共感できるところだ。本人も言及している「カエサル」好きはともかく、「ヴェネツィア」に対する彼女の愛情はこの著書を読みながらひしひしと読者に伝わってくる。 下巻の394ページより、 「栄枯盛衰が歴史の理ならば、せめてこのヴェネツィアのように、優雅に衰えたいものである。そして、ヴェネツィアが優雅に衰えられたのは、ヴェネツィアの死が、病気や試練をいく度も克服してきた末に自然死を迎える人間の、死に似ていたからではないだろうか。」 あらゆる苦難を国民の団結と知恵で切り抜けてきたヴェネツィア。私はこの「第13話 ヴィヴァルディの世紀」の最後に記されたこの文章を繰り返し読みながら、すっかりヴェネツィアの虜になってしまった。
最盛期を迎えた国家が衰退に向かい滅亡するまで・・
ジェノヴァとの制海権争い、オスマントルコとの断続的な戦争を戦い抜くヴェネティアだが、時代はすでに大航海時代にはいっていた・・・。海運の衰えを工業や農業の発展で補い、18世紀にヴェネティア文化は爛熟に至った。同世紀末、ナポレオンのイタリア侵攻により同国の独立は終わりを告げる・・・。 p 「歴史家は、国の衰退はその国の国民の精神の衰微によるという。だが、なぜ衰微したかについては、われわれが納得できるような説明を与えてくれない。」 著者は、隆盛を極めたひとつの国家が終焉を迎えるまでを丹念に描いていく。こうも言う。 p 「少なくともヴェネティア史に関するかぎり、このような単に精神の衰微や堕落のみに立脚した論にどうしても賛同することができない。」 こうした視点で描かれる歴史は、前巻に増して、諫言・警句・教訓に富み、飽かせない。 「20世紀のわれわれは、君主制はすべからく悪である、という色めがねを外すことから始めなければならない。」 p 「社会の上下の流動が鈍り、貧富の差が固定化し、結局はその社会自体の持つヴァイタリティの減少につながる。こうなってはもはや、いかなる改革も、いかなる福祉対策も効果はない。」 「英雄待望論は、報われることなど期待できない犠牲を払う覚悟とは無縁な人々が、自己陶酔にひたるに役立つだけだからである。」 p 歴史に学ぶ、とは言い古された言葉だが、そうした知的好奇心を満足させてくれる名著。 「栄枯盛衰が歴史の理ならば、せめてこのヴェネティアのように、優雅に衰えたいものである。」 見事!
ヴェネツィアの興亡
ヴェネツィア共和国の誕生から成長、大発展までを描いた本。政治、文化、一般庶民の暮らしぶりまでさまざまなな側面を描いています。筆者の文章は読みやすく、その分量にもかかわらず、まったく読むスピードが落ちませんでした。歴史の紹介だけではなく、ヴェネチアに対する筆者の洞察も秀逸。数年ごとに読み返したくなります。また、この本を読んでからヴェネツィアへ旅行へ行くと旅行がとても豊かになります。
なるほど(下)
ん~~。正直言って戸惑ってしまった。この本の前半部分、これが同じ人が書いたものかと。著者がもっとも信頼していた編集者が物故したのは、みなさんご承知の通り。編集者が違うとこうも違うものかと。全編を流れる文章のリズムと「節」立てが、明らかに違うのである。しかも、文章が硬直しているのである。さすがに、150ページ過ぎたあたりからは、七生流に流れはじめるのではあるけれど。 この本は、いろいろな意味において、彼女の作家生活にとって大きな転機になっているのは、間違いない。彼女曰く「スペンシェラータ(気楽なとか、無責任なという意味)ではもはやなくなった、つまり大人になったということでしょう。」 まったく、なるほど、である。

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