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カスタマーレビュー数:2
【くちコミ情報】
歴史的名演
私の主観では「32番 ハ短調 作品111」は、スタジオ旧盤(モノラル録音)を超える演奏ではないと思う。すなわち作品111はスタジオ旧盤でバックハウスは未到の境地に至っており、このカーネギー・ホール・リサイタルはその再現と感じた。 《悲愴》はスタジオ旧盤より熱がこもっておりエキサイティング。第2楽章はスタジオ旧盤と同様、深い情感。それに加えて、やはり熱い。《テンペスト》《告別》も熱く、一つ一つの音に私の身体が反応してしまう。 私は作品111よりも《悲愴》《テンペスト》《告別》にこのライヴの魅力を感じる。 アンコールのシューベルト、シューマン、リスト編曲のシューベルト、ブラームスは、いわばホロヴィツ的...何が飛び出すか分からないびっくり箱。このアンコールだけでも購入の価値あり。このアンコールを聴けばバックハウスが、技巧的なだけのピアニストではないことがわかる。彼はただ音楽を愛し、演奏をすることに喜びを感じる...そんなピアニストなのだ。
ベートーヴェン第32番ソナタのバックハウス解釈を聴く
バックハウスが1950~54年に残したベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集のモノラル録音は、録音史上における最大の芸術的遺産と断言する事に私は躊躇しませんが、その録音を補完して、彼のライブにおける姿を知る為にもうひとつ重要な録音が、この1954年に録音された、「カーネギー・ホール・リサイタル」です。 ステレオ録音でしかバックハウスを知らない方々は、この録音を聞かれると多いに驚かれる事でしょう。ここに聴くバックハウスの姿は、まさに即興性の塊で、インテンポの中に絶妙な揺らぎや加速などが交錯する事によって、生々しい一期一会の芸術的神秘、音楽の迫真性を獲得しています。これこそがバックハウスの芸術の真髄でありました。 このディスクの中でも特に第32番の演奏は、20世紀最大のベートーヴェン解釈者としてのバックハウスの最高の記録であると私は断言します。第32番はベートーヴェン屈指の名曲として知られており、通なクラシックファンの間で同曲を溺愛する人が決して少なく事を私は承知していますが、きっとそれらの方々もこのバックハウスの解釈を聞くときっと仰天なさると思います。 第1楽章、8:10 第2楽章、13:25 問題は第2楽章です。これ程、演奏時間が短い同曲の演奏はほとんどありません。なぜこれ程短いのかといいますと、前半のアダージョが次第に加速を帯びて途中から完全にアンダンテになっているからです。これは同録音のみならず、他日の録音にも聴かれるバックハウスの同曲に対する一貫した解釈なのですが、これについては「弾き飛ばし」であると非難する声が一般にあるのを私は耳にします。しかし、ここにこそ、バックハウスの本質があると私は思っています。ここで詳しくは語る事はできませんが、私が思うに、バックハウスはこの曲について、多くのピアニストが第2楽章前半のアダージョ部で表現しようとする「人間的な感情への沈潜」を徹底的に拒否しようとしているのではないでしょうか。人間的感傷を吹き飛ばして、一気に天の高みに飛翔する事こそがバックハウスが同曲に見出したベートーヴェンの姿であったと、この演奏を聴くと理解されます。 ベートーヴェンの第32番に興味のある方、またバックハウスのベートーヴェン解釈に興味ある方には必聴の録音であると私はお薦めします。
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